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  • 執筆者の写真かばさわ洋平

緊急事態に関する国会審議を求める意見書に反対討論しました


自民党提案の緊急事態に関する国会審議を求める意見書に反対討論に立ちました。






 日本共産党千葉市議団を代表いたしまして、発議第9号・緊急事態に関する国会審議を求める意見書について、反対の討論を行います。


 緊急事態に対応できる国づくりに向け、憲法のあり方について議論を行うともに国民的議論を喚起するよう求める趣旨の意見書であります。先の議会運営委員会で緊急事態に対応する憲法のあり方とは、憲法への緊急事態条項の新設のことかと質したところ、緊急事態条項の新設を念頭に置いているとの回答でありました。

その上で、主に3点反対の理由を述べたいと思います。


 まず、反対する第1の理由は、大震災や感染症など大規模な災害については、災害対策基本法や新型インフルエンザ等対策特別措置法で緊急時の対応は可能であり憲法改正の必要がないからであります。大震災やコロナ感染症で多くの課題を残したとありますが、問題は憲法の規定がないからではなく、課題は現行の法律内で災害やコロナ対応が可能な内容であるにも関わらず、政府による初動の遅れや支援不足にこそ、課題があったと指摘するものであり、そのことをもって憲法に緊急事態条項の追加を求めることは問題と考えます。


 第2の理由は、自民党による改憲案の緊急事態条項は、時の内閣の権限を強化し、国民の権利を制限し、民主主義の機能を停止させる恐れが強いものであるからです。自民党改憲案を確認すると「大地震その他の異常かつ大規模な災害」で「国会による法律の制定を待ついとまがない」場合は、内閣は政令を制定できるという内容です。

 これまでの歴史を振り返りますと、憲法の「緊急事態条項」が乱用され、人権を侵害し、言論抑圧につながる危険は世界の歴史からも明らかであります。第2次世界大戦前のドイツでは、ワイマール憲法48条の「大統領非常権限」が乱発された結果、ナチス・ヒトラーの独裁政権に道を開きました。日本でも明治憲法下の1923年の関東大震災の際、戦時に軍隊に権限を集中する戒厳令の一部を緊急勅令によって施行するなど適用が拡大される中で、軍隊や自警団による朝鮮人虐殺などが引き起こされました。戦後制定された日本国憲法で「緊急事態条項」を設けなかったのは、こうした痛苦の経験を踏まえたためであります。


 第3の理由は、憲法改正の議論より、現行憲法を守るための努力こそが必要と考えるためであります。憲法第25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」とあるものの、物価高のなか年金カットや医療費負担増を強いる政治は改めなければなりません。あるいは憲法第26条の義務教育は無償とありながらも、学校給食費や教材費を取り続けることは憲法に反すること、さらに言えば、憲法99条には、国会議員含め、「憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」とうたわれておりますので、憲法を擁護し、その理念にそった国会運営・審議こそ必要だということも申し上げたいと思います。


 以上、緊急事態条項で、時の内閣に権力を集中させる仕組みは人権侵害につながる危険があること、コロナ危機への対応の課題から、緊急事態条項など憲法を改正することを目的とすることは問題であり、むしろ現行憲法でうたわれる義務教育の無償化実現など、国会で審議すべきであると考えるため、緊急事態に関する国会審議を求める意見書には反対するものであります。

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