「横田基地内でPFAS3回漏出」米軍が初めて認める 汚染源の可能性強まる 基地外漏出は「認識していない」

2023年7月5日 22時49分
 東京・多摩地域を中心に発がん性の疑いがあるPFAS(ピーファス)が高濃度検出されている問題を巡り、在日米軍が横田基地(東京都福生市など)で2010〜12年の3回にわたり、PFASを含む泡消火剤の漏出事故が起きたのを防衛省に伝えていたことが分かった。米軍が横田基地内でのPFAS漏出を認めたのは初めて。防衛省が、都の問い合わせに答える形で判明した。多摩地域では、大規模な住民の血液検査で高濃度のPFASが検出されており、横田基地が汚染源の可能性が強まった。(松島京太、渡辺真由子)

 PFAS 泡消火剤やフライパンの表面加工などに使われてきた有機フッ素化合物の総称。約4700種類以上あるとされる。一部は人体や環境への残留性が高く、腎臓がん発症や胎児・乳児の成長阻害、コレステロール値の上昇、抗体反応の低下などの健康リスクがあるとされ、国際的に規制が進む。本紙は6月11日から始めた連載記事で、2010〜20年にかけて横田基地で6回の泡消火剤の漏出事故があったことを報道。このうちの3回が、米軍が認めた漏出と同一とみられる。

◆防衛省が「説明あった」と東京都に回答

 都によると、6月の本紙報道を受け、防衛省に漏出について問い合わせたところ、30日に北関東防衛局から、米軍が漏出事故を説明したとする回答がメールであった。防衛省から公表の了承が得られたとして、7月5日に明らかにした。
 メールでは「10年から12年までに3件の泡消火剤の漏出があったが、基地外へ流出したとは認識していない」と、米軍は基地外への漏出を否定。3件の漏出時期と場所については、10年1月に格納庫、12年10月にドラム缶、11月に保管容器とあった。漏出量は明らかにしていない。
 これを受け、都は周辺自治体とともに5日、防衛省に漏出場所や漏出量などの詳細情報を提供することや、国の責任で地下水への影響などについて調査分析するよう求めた。要請書では「PFASについては、多くの都民が健康への影響などについて不安を抱いており、早急に払拭する必要がある」と指摘した。
 都の担当者は「国がまず方向性を示してくれないと、都としても動きようがない」とコメント。北関東防衛局は本紙に、米側に問い合わせた時期や回答を得た時期について「答えられる担当者が不在」とした。
 横田基地のPFAS汚染を巡っては、英国人ジャーナリストが18年、米国政府への情報公開請求で得た文書を基に、漏出事故を報道。時期や回数も今回明らかになったものと一致している。漏出量は3回で3000リットル以上とされる。
 PFAS汚染問題に詳しい京都大の原田浩二准教授(環境衛生学)は「漏出事故が起きたのであれば、PFASは土壌を通じて周辺地域に広がったと考えられる。今後は日本側が基地内への立ち入り調査や情報公開などを米軍に強く求めるべきだ」とした。

◆「10年以上たって、いまさら何だ」 声震わせる周辺住民

米軍横田基地

 米軍横田基地でのPFAS漏出事故から10年以上が経過し、東京都や周辺市町に事故の事実が伝えられたことについて、住民からは怒りの声が上がった。
 「10年以上もたって、いまさら何だ。住民の健康をなんだと思っているのか」。横田基地の近くに住む立川市の興梠こうろき賢二さん(61)は一報を聞き、声を震わせた。「私たちは何も知らされず、ずっとPFASにさらされていた。軽く見られていたとしか思えない」
 多摩地域の住民の血中PFAS濃度を調べてきた市民団体「多摩地域のPFAS汚染を明らかにする会」の根木山幸夫共同代表も「PFAS問題に注目が集まって無視できなくなったのだろう」と推測。「それにしても、あまりにも遅かった」と批判した。
 都と周辺5市1町でつくる連絡協議会も5日、要請文で「速やかに情報提供がなされなかったことは極めて遺憾」と批判した。(昆野夏子、岡本太)

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