マイナ制度は「なりすまし犯罪の温床」 情報システム学会が「制度設計に根本的な問題」と提言

2023年10月26日 06時00分
 トラブルが相次ぐマイナンバー制度について、情報システムの専門家でつくる学会が今月、「制度設計に根本的な問題がある」と指摘する提言をまとめた。政府が目指すマイナンバーカードと健康保険証や運転免許証との一体化などについて、「このまま推進すると国民にとって不利益が大きくなる」と警鐘を鳴らし、見直しを求めた。

◆「目的には賛同」…でも課題を次々に指摘

 提言したのは、情報システムの研究や実践に取り組む大学や企業、行政などの専門家約300人でつくる「情報システム学会」。
 提言では、「国民の利便性向上や行政の効率化、公平・公正な社会の実現という目的には賛同する」とした上で、「現状はそれを達成する最適な制度設計になっていない」と明記した。
 例えば、心身が不自由な高齢者施設の利用者が、マイナカードと暗証番号を施設に預けざるをえない場合、「カードの高度なセキュリティー機能は無意味になり、暗証番号も意味をなさない。カードと暗証番号で銀行口座の開設などさまざまなことができる設計のため、なりすまし犯罪の温床になる可能性がある」と指摘した。

情報システム学会の砂田薫会長

 また、マイナカードに健康保険証や運転免許証を一体化するために機能が増えているため、「システム設計が多岐にわたり、多くの矛盾や齟齬そごが発生している」とした。具体的には、現行の運転免許証なら紛失しても即日発行されるが、免許証と一体化したマイナカードをなくすと、再交付までに日数がかかるといった運用面の課題を挙げた。
 同学会の砂田薫会長は「政府はゴールに向けた全体計画と現時点の成果や費用対効果を国民に分かりやすく説明する必要がある」と話した。(嶋村光希子)

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