杉田水脈のなでしこリポート(20)

「民主主義は進み、妥協するのが下手になった」…デンマークで聞いた興味深いエピソード

 すると何が起こったか。以前は家庭に貧富の差があっても先生が教えることを同じように聞いていたので、学力に家庭格差は反映されなかったのですが、先生の地位の低下により親の教育の影響が子供に強く表れるようになったのです。親が賢ければ子供も賢く、親がそうでなければ子供の教育も不十分になる傾向が強くなった、家庭格差の固定化がなされたとのことでした。生徒の過度な権利主張が増えたことも残念だとおっしゃっていました。デンマークには塾や予備校はありません。教育費はすべて無料ですが、やはり格差は存在するそうです。

 また民主主義は家庭にも広がり、夫婦間の妥協ができなくなり、離婚が増え、今では離婚率が48%になりました。若いうちから性に奔放な風土があり、一人の人間と添い遂げるということに価値観を見いだせなくなったことも原因の一つと言えるそうです。オーレ先生曰く、「民主主義は進み、妥協するのが下手になった」のだそうです。

 デンマークでは、最終的に大学を卒業して社会に出るのは29歳頃になります。この「モラトリアム期間」があるため、新人教育なしで、即戦力として企業で仕事ができるという半面、婚期が遅れるという問題点も指摘されています。ここ20年くらいデンマークの大学進学率は女性が男性を上回っています(男性が40%女性が60%)。優秀な女性が自分以上の男性を探すため、ミスマッチが起こり、晩婚化がますます進んだようです。この女性の経済的自立も離婚率をあげた原因だろうとのことでした。「女性の地位向上、男女平等が進むと少子化が進むのです」とおっしゃったのが印象的でした。

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