2023.10.04

最近「タクシーが全然捕まらない」ことが暗示する、ヤバい日本経済の実態…岸田首相は「人手不足」の理由に気づいているのか?

日本経済にこれまでにない異変が生じている。岸田文雄首相は訪問先のニューヨークで「日本経済が新たなステージへと移行する変化が出ている」とポジティブな発言を行ったが、現実には、物価上昇と不景気が共存する、いわゆるスタグフレーションである可能性が高い。岸田政権は秋の臨時国会で大型の景気対策を策定する見通しだが、現状認識を誤って政策を立案した場合、今後の日本経済に致命的な影響を与えることもあり得る。

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日本経済はコロナを境に一変した

今年の夏は、久しぶりに旅行が活性化するなど前向きな話題もあった。一方で、指定の日時に荷物が到着しない、異様なまでにタクシーが捕まらない、建設工事が大幅に遅延するなど、従来では考えられなかった事態が各地で頻発している。パビリオン建設が一向に進まない大阪万博はその象徴といってよいだろう。

一連の出来事は、個別要因で発生した一過性のものではなく、日本経済の仕組みが従来とは大きく様変わりしたことに起因している。もっと具体的に言えば、日本経済は慢性的な供給制限に陥りつつあり、不景気であるにもかかわらず物価は上がり続け、国民は十分な量のモノやサービスを購入できない状況となっているのだ。

これまでの日本経済は、デフレであり需要が足りないと言われ続けた。需要が足りないことには本質的な理由があるのだが、多くの専門家はこの現実から目を背け、単純な(景気循環論的な)需要不足であるとして、各種の財政政策や金融政策を提言してきた。だが、まったくと言って良いほど結果が得られていないのはご承知の通りである。

この問題は一旦、横に置いておくとして、これまでの日本経済が需要不足であり、供給過剰だったのは、現象としては事実である。ところがその大前提がコロナ危機を境に劇的に変わりつつあるのだ。

内閣府は2023年9月1日、需要と供給の差を示す「需給ギャップ」が3年9ヵ月ぶりにプラス転換したと発表した。

需給ギャップがプラスということは、需要に対して十分な供給が行われていない状況であり、経済白書の言葉を借りれば「もはやデフレではない」ということになる。

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