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熊本のイ草、生き残り模索 作付けはピーク時の6%【スクランブル】

 畳表の材料となるイ草の生産が存続の危機に立たされている。安価な畳表の輸入品に押され、国内のイ草生産の大半を占める熊本県の作付面積はピーク時の約6%に激減。農家の高齢化、住宅の洋風化に伴う需要落ち込みなど課題解消のハードルは高いが、生き残りを模索する。

刈り取りを目前に控えたイ草=2022年5月、熊本県八代市(北川昌義さん提供)
刈り取りを目前に控えたイ草=2022年5月、熊本県八代市(北川昌義さん提供)
乳児用の寝ござを手にする、畳表の卸問屋を営む北川昌義さん=15日、熊本県八代市
乳児用の寝ござを手にする、畳表の卸問屋を営む北川昌義さん=15日、熊本県八代市
熊本県八代市内のイ草畑=2022年7月(稲田近善さん提供)
熊本県八代市内のイ草畑=2022年7月(稲田近善さん提供)
畳表の卸問屋を営む北川昌義さん=15日、熊本県八代市
畳表の卸問屋を営む北川昌義さん=15日、熊本県八代市
イ草や畳表について説明する北川昌義さん=15日、熊本県八代市
イ草や畳表について説明する北川昌義さん=15日、熊本県八代市
イ草作付面積と畳表輸入量の推移
イ草作付面積と畳表輸入量の推移
刈り取りを目前に控えたイ草=2022年5月、熊本県八代市(北川昌義さん提供)
乳児用の寝ござを手にする、畳表の卸問屋を営む北川昌義さん=15日、熊本県八代市
熊本県八代市内のイ草畑=2022年7月(稲田近善さん提供)
畳表の卸問屋を営む北川昌義さん=15日、熊本県八代市
イ草や畳表について説明する北川昌義さん=15日、熊本県八代市
イ草作付面積と畳表輸入量の推移

 「数年でオセロをひっくり返すかのように中国産に変わってしまった」。熊本県八代市で畳表の卸問屋を営む北川昌義さん(59)は振り返る。国産畳表の半額以下の中国産は1996年ごろから品質が向上し、国産品の売れ行きは振るわなくなり、イ草生産者の転作や離農が続いた。
 国や熊本県の統計によると、2022年の県内の作付面積は380ヘクタール。最盛期の89年には6630ヘクタールに上ったが、畳表の輸入増加と裏腹に減少の一途をたどった。現在、輸入品は需要の低迷で減っているが、それでも国内販売シェアの約8割を占める。
 そもそも、畳文化がない中国でイ草生産がなぜ広がったのか―。福岡市で自治体や中小企業の輸出支援を手がける小島尚貴さん(47)によると、日本人が栽培技術や畳表用織機を人件費が低い海外に持ち出す動きが80年代から相次いだという。
 小島さんは、家具や衣服など多くの業界で採用されてきたこうした「逆輸入」の手法を「自損型輸入」と呼び、地方経済を疲弊させたと分析する。「根本的な解決には消費者マインドを変えることが不可欠だ」と指摘し、過度に安い商品を追い求める消費行動からの転換を提唱する。
 輸入品に対抗すべく行政や生産者が活路を見いだすのがイ草の高品質化だ。茎が長くて枯れにくいといった改良を進め、熊本県では優良品種の21年産の作付け割合を97%に高めた。
 雑草処理など手間と経費を要するが、無農薬栽培の取り組みもある。北川さんは無農薬のイ草で乳児用の寝ござを開発。安全な上、目が細かく肌に痕が付きにくいのが特徴だ。「イ草の香りや心地よさに幼いときから慣れ親しんでほしい」と思いを込める。
 八代市の食品会社「イナダ」は無農薬のイ草を使ったアイスやあめ、ブレンド茶などを販売。ミニ畳の製作体験会を催すなど、観光資源としての活用にも力を入れる。稲田近善さん(49)は「敷いて使う畳だけでなく、いろいろな使い道が展開できる」とイ草の可能性を訴える。

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