2000年代のジャニーズと文春の裁判とは

どういうものであったのか

振り返りたいと思います。

 

1999年、文春は14回にわたり

ジャニーズについて連載をし、

それについてジャニーズ事務所とジャニー喜多川氏は

名誉棄損で文藝春秋を提訴。

 

名誉棄損としたものは

 

1、ジャニー喜多川は少年らが逆らえばステージの位置が悪くなったり

  デビューできなくなる状況に乗じてセクハラを行っていること

 

2、合宿所などで初年たちの日常的な飲酒、喫煙を認めていること

 

3、学校に行けないような無理なスケジュールを課していること

 

4、Jr.4人が起こした万引き事件の報道を封印したこと

 

5、フォーリブスメンバーに対して非道なことをしていること

 

6、関西出身のジャニーズは給与面などの待遇において

 

7,かねてより所属タレントは給与が少ないなど冷遇されていたこと

 

8、チケット購入の際、手数料がかかるなどファンを無視したファンクラブを運営してること。

  Jr.と付き合っているファンに対し脅したこと

 

9、マスコミはジャニーズを恐れ追従していること

 

2002年3月27日

一審に置いて文藝春秋は1,2,4,5,7の5点について敗訴。

東京地裁は文藝春秋に880万円の損害賠償金を命じた。

 

 

判決では

(名誉を毀損するか否かについて、所属タレントに対する「セクハラ」の報道が

「原告喜多川、ひいては同原告が代表者を務める原告事務所の社会的評価を低下させるものというべきである」

などと判断を示した。 

 

真実性および真実相当性については、

少年らが被害日時について「具体的かつ明確に述べていない」、

取材班も「取材源の秘匿を理由として、これを明らかにすることはできないとしている」などとして、

「少年らの供述は、原告らの十分な防御を尽くすことができない性質のものであって、

原告喜多川のセクハラ行為を真実であると証明するのは、なお足りるものではない」。

つまり、少年らの供述を真実と認めなかった。 

 

 

その理由として、取材の不十分さがあるとの判断を示している。

 「被害者とされる少年らの側のみではなく、加害者とされる原告喜多川ないしは原告事務所の側に対しても、

可能な限りの取材を尽くす必要があった」 としたうえで、 「原告らが被告らに対し取材拒否の姿勢を示したとみることはできず」 「報道機関である被告らとしては、なおさら慎重を期して、適切な期間をもって取材申入れを続けるべきであったといえる」 と述べ、 「可能な限りの取材を尽くしたと認めることはできない」として真実相当性は認められないとした。

 もう1つが、少年の供述の不確かさだった。 

「少年ら等から捜査機関に対する告訴等がされた形跡もなく、捜査機関による捜査が開始された状況もうかがわれない」

 「(少年らが逆らえばステージの立ち位置が悪くなったりデビューできなくなるという抗拒不能な状況にあるのに乗じ、

セクハラ行為をしていることに関し)その重要な部分が真実であるとの証明はされていないといわざるを得ない」

 

 

 

要するに1審において1のセクハラ行為が名誉棄損とされたのは

セクハラ報道が社会的評価を低下させる

少年たちの供述の曖昧さ、

文藝春秋側の取材の不十分さ

そして捜査機関に告訴された形跡がない=真実であるとの証明がされない、

ことから名誉棄損とされた。

 

この判決を不服とし、双方が控訴する。

 

2003年5月15日、二審においては

少年らの供述は具体的で全体として信用でき、

「セクハラに関する記事の重要な部分について真実であることの証明があった」

とし

東京高裁は判決文の中で

「少年らが逆らえばステージの立ち位置が悪くなったりデビューできなくなるという抗拒不能な状況があるのに乗じ、

セクハラ行為をしているとの記述については、いわゆる真実性の抗弁が認められ、

かつ、公共の利害に関する事実に係わるものであるほか、

公益を図る目的でその掲載頒布がされたもの」であるとした。 

 

 少年らから刑事告訴がなかったことについては

「社会的ないし精神的に未成熟であるといった事情」や、

ジャニー喜多川氏と少年らとの社会的地位や被害内容の性質を踏まえ、次のように指摘した。

 「少年らが自ら捜査機関に申告することも、保護者に事実をうち明けることもしなかったとしても不自然であるとはいえず、セクハラ行為を断れば、ステージの立ち位置が悪くなったり、

デビューできなくなると考えたということも十分首肯できる」

 また、法廷でのジャニー氏の証言内容にも言及する。 

「一審原告喜多川は、少年らの供述するセクハラ行為について『そういうのは一切ございません』

と述べるだけであって、ある行為をしていないという事実を直接立証することは不可能であるとしても、

少年らが供述する一審原告喜多川からセクハラ行為を受けた時の状況やその他セクハラ行為に関する事実関係について、

一審原告らは具体的な反論、反証を行っていない」とした。

 

2004年2月24日、ジャニーズ側が最高裁判所に控訴するも棄却。

この時点で2,4,5,7において文藝春秋側の敗訴とした

高裁判決が決定し

文藝春秋側に損害賠償金120万円の支払いを命じた。

 

かなり長い文で、判決文などきっとみんな、普段読まないものなので

理解に時間はかかると思いますが

二審において「セクハラに関する記事の重要な部分について真実であることの証明があった」

とされたのは、捜査機関に告訴してなくても少年らは未熟なので理解できる、

少年らの証言についてジャニー氏が具体的な反論、反証を行っていない、とされたためで

 

つまりは少年らの証言に具体的な証拠があって真実とされたわけではなく

反論反証できなかったから、というものなのです。

 

民事訴訟において原告側の主張を通すのには

具体的な証拠は原告側が用意しなくてはなりません。

それがジャニーズ側にできなかった、ということです。

 

これは刑事裁判においての、それとは

全く性質が違います。

 

 

1、3、6、8、9は

これはジャニーズ側が起こした名誉棄損の裁判ですから

名誉棄損として認められなかった、ということなのです。

 

この裁判で、セクハラ行為の記述について

事実無根をジャニーズ側が証明できなかったので

グレーではありますが

セクハラ行為の認定を裁判所が行ったわけではありません。

 

セクハラ行為の認定、というのは

こういうネットニュースを書く人が

そう書いてるだけ。

 

具体的な証拠が提出され、検証されたわけでもないのに認定出来るわけがない。

 

 

この裁判においては

3、6、8、9で文藝春秋側が敗訴し

1、2、4、5、7においては

名誉棄損として認められなかった、というのが

この裁判の正しい理解だと思います。

 

それはこの裁判の結果、

文藝春秋側が120万円の賠償金の支払いを命じられた、という

ことからもわかります。

 

この件に関して、ジャニーズ側は高裁から謝罪、損害賠償金を

命じられはいません。

 

どうか聡明なみなさまにおかれましては

民事裁判の名誉棄損の訴えというものに対して

正しい理解をしてネットニュースの言葉の操作に

騙されることがないことをお願いします。

 

追記

 

何故一審で認められたセクハラ行為の名誉棄損が

二審でひっくり返ったかわかりました。