旧統一教会の解散命令を請求 文科省が東京地裁に

ニコラス・ヨン、ジーン・マケンジー、BBCニュース

Unification Church members at the funeral of their founder Sun Myung Moon

画像提供, Getty Images

画像説明, 旧統一教会は日本で約10万人の信者がいるとされる。創設者の文鮮明氏の2012年の葬儀には信者が多数参列した

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令を、文部科学省が13日、東京地裁に請求した。旧統一教会は昨年7月の安倍晋三元首相の暗殺事件のあと、高額献金などが改めて問題視され、同省の調査を受けていた。

旧統一教会をめぐっては、安倍氏に対する殺人罪などで起訴された山上徹也被告が、教団によって母親が破産したと主張。安倍氏がそれを助長したとした。

旧統一教会は、安倍氏の暗殺で不当に非難されているとしている。

岸田文雄首相の指示で文科省が実施した調査は約1年にわたった。

解散が命じられれば、旧統一教会は税制上の優遇がなくなる。ただ、宗教団体としての活動は続けられる。

山上被告は、30年にわたって旧統一教会の信者だった母親が、献金を強いられたと主張している。同様の被害の訴えは多数あり、総額で数十億円規模の返金を求める訴訟が起きている。

宗教法人法では、宗教団体に「法令に違反して著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」があった場合、裁判所が宗教団体に解散を命じることができる。

文科省は先に、旧統一教会が活動に関する質問に答えなかったとして、東京地裁に過料を科すよう求めた。

日本の政治家と関係深める

安倍氏と旧統一教会の関係は、生前から特にソーシャルメディアで多くの憶測を呼んでいた。

2021年の教団関連のイベントには、ビデオメッセージの形で登場した。祖父の岸信介元首相は、反共産主義の立場から教団と近かったとされる。

教団は1954年、韓国で設立された。「合同結婚式」で知られる。創設者の故・文鮮明(ムン・ソンミョン)氏の名前から、信者たちは「ムーニー」と呼ばれる。

日本には1960年代に進出。政治家との関係を深めることで信者を増やし、評判を高めたと、研究者らは分析している。

長年にわたって論争の的となり、批判的な立場の人からは「カルト的」と評されてきた。

献金を強要されたと主張する信者たちからは、複数の訴訟を起こされている。原告側の弁護団によると、被害額は過去5年間で少なくとも54億円に上るという。

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与党・自民党の内部調査では、党所属の国会議員全379人のうち179人が旧統一教会と接点があったことが判明した。

岸田氏は自民党議員に対し、旧統一教会との関係を断つよう指示。同時に、自らは個人的なつながりは一切ないと強調した。

昨年10月には、旧統一教会に対する調査を文科省に指示した。その際、教団が信者から金を搾取してきたとの非難の声を真摯(しんし)に受け止めると述べた。

解散命令は出るのか

旧統一教会に関する著書があり、カルト問題に詳しい櫻井義秀・北海道大学教授は、解散命令が出れば、「問題性が高い」教団の力はかなり落ちるだろうとみている。国民が警戒感を高め、政治家も旧統一教会との関係がスキャンダルになるからだという。

しかし、新聞社や旅行代理店、小売店など、旧統一教会に何十とある関連の企業や政治団体の活動は、解散命令ではまったく止められないと櫻井教授は指摘。そもそも、裁判所が解散命令を出さないことも考えうると述べる。

「自らの意思で信者になり、被害に遭ったとは思わずに教団の活動を続けている人もまだ数万人規模でいる。被害者と信者が同時に存在する状況で、裁判所が旧統一教会を完全に『クロ』と判断するのは簡単ではないだろう」

追加取材:田村栄治(東京)