写真提供:HAN環境・建築設計事務所

「日本の住宅性能は先進国では最低レベルだ」と聞くと、驚く方も多いのではないでしょうか。一流と呼ばれるハウスメーカーですら、他国の性能基準に満たない住宅を新築しているという実態があります。ここでは、住まいるサポート株式会社代表取締役の高橋彰氏が、「後悔しない住まいづくり」に必要な2つの知識を紹介・解説していきます。

日本で最高等級の「窓」は、他国では…恐ろしい実情

日本の住宅の断熱・気密性能が低いことの要因の一つに、窓の断熱性能の低さがあります。[図表1]にある通り、夏に家に流入する熱の74%、冬に家から流出する熱の52%が、窓を入口・出口としています。

 

[図表1]住宅の省エネにおける窓の重要性

 

しかもこの算出の前提は、複層ガラスのサッシです。日本の既存住宅の多くはいまだに単板ガラスですから、この割合はもっと高いと思ってよいでしょう。

 

つまり窓の高断熱化だけで、住宅の断熱性能は、十分とまではいかずとも相当改善されます。

 

日本の窓の性能が低い理由の一つに、樹脂窓の普及の遅れがあります。[図表2]をご覧ください。我が国の樹脂窓の普及率は、他国と比べてかなり低い20%にとどまっています。

 

[図表2]樹脂窓の普及率

 

欧米はおろか、韓国、中国よりも普及率が低いのです。日本ではまだまだ一般的なアルミサッシは、他の国々ではほとんど使われていません。アルミの熱の通しやすさ(熱還流率)は、樹脂や木の1,000~1,400倍にも上ります。そのため、アルミサッシを使っている時点で十分な断熱性能を確保することは難しいといえます。

 

[図表3]は、世界の窓の断熱基準です。

 

[図表3]世界の窓の断熱基準

 

ドイツでは、熱還流率(U値)は1.3〔W/㎡・K〕以下でなければなりません。中国は地域によりますが、概ね北半分は、2〔W/㎡・K〕前後、米国も南部地区以外は2〔W/㎡・K〕未満が要求されています。それに対して日本は、地域によりますが、東京・横浜・名古屋・大阪・福岡といった温暖な主要都市が含まれる6地域の基準は、4.65〔W/㎡・K〕です。

 

日本の4.65〔W/㎡・K〕というのは、アルミのペアガラス。ドイツの1.3〔W/㎡・K〕というのは、樹脂のトリプルガラスになります([図表4]参照)。断面を見ていただければ性能の違いは一目瞭然かと思いますが、特にフレームの素材が重要です。

 

[図表4]住宅断熱性能の日独比較

 

また、日本サッシ協会は窓の断熱性能のラベリング制度を運用していますが、主要都市の基準が4.65〔W/㎡・K〕なのでそれ以上の性能ならば☆1つ、2.33〔W/㎡・K〕で、最高ランクの☆4つの評価がもらえることになっています。

 

 

[図表3]をあらためてご覧ください。お気づきでしょうか? 日本で最高ランクの☆4つ評価をもらえるサッシを他の国に持っていくと、最低基準を満たしておらず、違法になってしまうのです。

 

日本で、「普通に家を建てる」とはどういうことなのか、この情報だけでもかなりご認識いただけたのではないでしょうか。

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