こんな政治家が今の世にいてくれたらと思う。幕末の勘定奉行や外国奉行などを歴任した幕臣、川路聖謨(としあきら)である。
本書は、川路が奉行として赴任していた奈良での仕事と暮らしを江戸に残してきた母親に伝えるために書いた約四年間の日記形式の手紙に材を取った歴史小説だ。
母親を楽しませるための通信なので、川路一家や家臣とその家族たちの愉快な出来事も多く含まれ、ページを繰るごとに二百年前の江戸の日常が立ち現れる。
奉行所で働く娘たちが全裸で庭に並んで月光を浴びていた。北方探検家、間宮林蔵には極秘の一面があった。そろって衣服を脱いだ理由や間宮の素性が明かされていく。こんな話が満載だ。
読後感は、冒頭のひと言につきる。外交条約締結を求めて軍艦で来航した大国ロシアのプチャーチンとの交渉に当たり、択捉島以南を日本領として確保したのも川路である。
川路の生涯に比べると、勝海舟などは同じ幕臣でも世渡りにたけた俗物であることが明々白々となるだろう。川路は幕府の崩壊に殉じ、切腹し短銃で自害した。
川路は奈良奉行の時代、古都の大路に桜並木を復活させたことでも知られる。題名『花のなごり』は、そこに由来する。読み終えての明るくすがすがしい余韻が約束されている。
川路聖謨の奈良時代の前半を描いた、出久根さんの前作『桜奉行』との併読もお勧めしたい。
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花のなごり -奈良奉行・川路聖謨- 単行本 – 2021/11/26
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2021年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」でも、重要な役柄で登場した川路聖謨(かわじ・としあきら)。幕末の動乱期、黒船来襲・開国要求の外圧の嵐ふく中、北方領土を求めてきた大国ロシアを相手に一歩もゆずらず、和親条約締結にこぎつけた川路聖謨は、その数年前まで奈良奉行を5年あまり務めた。 「五泣百笑(博徒や悪徳僧侶・役人・商人、裁判の短期化で泊まり客が減った公事宿の五つが泣き、百姓・庶民が笑う)」の奉行と呼ばれた彼の人柄、その思想・信念が、さまざまな事件や家族・部下たちとのやり取りの中に浮かび上がる著作である。 2016年11月に発刊した『桜奉行 -幕末奈良を再生した男・川路聖謨』(養徳社刊)のその後、奈良奉行時代の話と、江戸城開城の日に自決するまでを描いている。 奈良奉行に赴任したのは春、桜の季節だった。 川路は、「花の都」と聞いていた奈良の、桜も枯れ、人心も荒廃した様に驚いた。貧民救済、犯罪取り締まりの強化、地場産業の振興、教育の充実など、次々と施策を実行した。「桜楓の植樹運動」も、その一つである。 庶民が参加できる形をとりたいと、知恵を絞った。その思いは現在まで受け継がれ、地域住民の協力もあり、奉行所のあった現奈良女子大学の北を流れる「佐保川」の両岸には、千本といわれる桜の木が美しい花を咲かせている。川路が自ら植えたと伝わる「川路桜」も健在だ。 文武両道、その上詩文の心得もあった川路は、妻のさとと詩を読みあい、また、ジョークも飛ばすウィットに富んだ男だった。家族や部下たちとの軽妙なやり取りは、読んでいて微笑ましい。 江戸幕府に殉じた彼は、大分日田の下級武士に生まれ、幼時に江戸へ出てから、異例の出世を果たす。その根っこにあるのは、正に「人間力」と言えるだろう。自らには厳しく・人にはやさしい。5年あまりに及ぶ奈良奉行退任の時には、庶民たちが別れを惜しみ、何キロにもわたって沿道をうめつくした。数年後、ロシアとの交渉に長崎へ向かう道中、沿道に奈良の人々が列をなしたという。 誰もが人生を送る上で持ち得たい、と願うものを彼は備えていた。そう思わせる物語である。
- 本の長さ468ページ
- 言語日本語
- 出版社養徳社
- 発売日2021/11/26
- 寸法19.6 x 13.7 x 2.9 cm
- ISBN-104842601329
- ISBN-13978-4842601328
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商品の説明
出版社からのコメント
現在の政府、官僚に川路聖謨がいたら、と思う。勤勉であり、私利私欲を持たず、偏らず、公平に物事を見て諸事をなす。この本を編集した後、彼のようになりたい、と熱いものがこみあげた。広く俯瞰する眼を持ちながら、決して理想に走りすぎず、周囲との調和の中で物事を成し遂げる胆力。超多忙な日々の中で、暮らしに潤いを忘れない。 著者の出久根達郎さんは、自ら「最後の長編小説」と語っている。小説の考案の元には、川路聖謨が江戸に置いてきた実母にあてた日記『寧府紀事』があるが、その上に、様々な資料を駆使して書き上げられた情熱に、ただただ頭が下がる。 人として生きる意味を問い直す本だと、自信をもってお勧めする。
著者について
出久根達郎でくね・たつろう 1944年、茨城県生まれ。作家。古書店主。中学卒業後、上京し古書店に勤め、73年より古書店「芳雅堂」(現在は閉店)を営むかたわら執筆活動を行う。92年『本のお口よごしですが』で講談社エッセイ賞、翌年『佃島ふたり書房』で直木賞、2015年『短編集 半分コ』で、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。著書は他に、『古本綺譚』『作家の値段』『七つの顔の漱石』『おんな飛脚人』『謎の女 幽蘭』『人生案内』『本があって猫がいる』など多数。養徳社刊の月刊誌『陽気』に「まほらま」と題して、奈良奉行・川路聖謨が主人公の小説を連載。前半の『桜奉行 幕末奈良を再生した男・川路聖謨』(2016年11月)を養徳社から発刊。
登録情報
- 出版社 : 養徳社 (2021/11/26)
- 発売日 : 2021/11/26
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 468ページ
- ISBN-10 : 4842601329
- ISBN-13 : 978-4842601328
- 寸法 : 19.6 x 13.7 x 2.9 cm
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