日本製の武器で死者出る可能性も…輸出解禁に前のめり自民、慎重な公明 防衛装備移転三原則緩和へ論点整理

2023年6月22日 06時00分
 防衛装備品の輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」の要件緩和に向けた自民、公明両党の与党協議が21日、国会で開かれ、意見集約に向けた論点整理に着手した。主な論点は、殺傷能力のある武器も含め、輸出を認める対象を拡大するかどうかだ。殺傷武器の輸出が解禁されれば、日本の武器で海外で死者が出る可能性があり、憲法に基づく平和主義を逸脱しかねない。(川田篤志)
 与党の実務者が示した論点はほかに、日本が英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機を念頭に共同開発品の第三国への移転条件を緩和するかや、殺傷武器の部品の輸出も可能にするか—など。
 現行ルールでは武器輸出を認めるのは国際共同開発・生産品を除き、「救難」「輸送」「警戒」「監視」「掃海」の5類型に限っており、殺傷武器の輸出はできないと解釈されてきた。自民党は殺傷武器も含め幅広い分野の輸出に道を開くため5類型の撤廃を求めている一方、公明は「整理が必要だ」として慎重な立場で、今後の焦点となる。
 輸出できる対象国は現在、「日本の安全保障に資する場合」などに限られているが、政府・与党は「国際法に違反する侵略を受けている国」などに拡大することも検討している。
 他国との共同開発・生産品について、現行の運用指針では第三国に移転する場合、目的外使用などを防ぐため日本の事前同意を義務付けている。次期戦闘機に関し第三国輸出を進めたい英国やイタリアは、日本の煩雑な手続きの簡素化を求めており、自民党は要件緩和を目指す。
 部品を巡っては、今後退役する航空自衛隊のF15戦闘機の中古エンジンをインドネシアなどに輸出しようという狙いが政府や自民党にある。現行ルールでは殺傷武器を構成する部品の扱いは明確ではない。
 自民、公明両党は国会閉会後も議論を継続し、今月中に論点整理を終えたい考えだが、意見集約はさらに時間がかかる見通し。
 非政府組織(NGO)ピースボート共同代表で「平和構想提言会議」メンバーの畠山澄子氏は「戦争では市民が巻き込まれ犠牲になる。国際協力や平和貢献を持ち出して、殺傷能力のある武器の輸出を進めるのは、一般の人をあざむく行為だ」と批判した。

◆「国際紛争を助長しかねない」

 <元内閣官房副長官補・柳沢協二さんのウオッチ安全保障> 与党協議では殺傷能力のある武器の輸出を解禁するか議論している。「同志国」や侵略を受けた国、潜在的な紛争国を対象にすると思うが、これは紛争を武力で解決する道を選ぶのか、武力によらず外交や仲介で解決する道を選ぶのか、日本の大きな国家像につながっていく問題だ。
 紛争当事国に武器を出せば実質的な当事者になり、和平の仲介などはできなくなる。
 国際環境が激変し、戦争の危機が現実に高まっているからこそ、紛争を助長せず、平和解決を目指すことに平和国家としての価値がある。日本はその道を貫くべきだが、殺傷能力のある武器の輸出解禁は武力で紛争を解決するとの方向に傾くことになる。
 武器を周辺に輸出して日本の安全保障環境を良くしようというのは、中国との対立がすべてだと思っている国のものすごく勝手な見方だ。世界の圧倒的多数の「グローバルサウス」(南半球を中心とする新興・途上国)の国々は、対立に巻き込まれたくないというのが本音。武器輸出は国際紛争を助長しかねず、そうした国々のニーズとかけ離れる。

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